2021/03/08

ダークサバイバー

子ども虐待の被害者は、心に深刻な傷を負います。ヒトの幼体は未熟な状態でうまれ、長期にわたる養育者の庇護無くして生き残れません。養育者から暴力(精神的、性的含む)をふるわれても、それを受け入れて生きる他ありません。子どもは「親とはこういうもの」「これは親の愛」であるとして、「自分は痛くない、辛くない」と、自分を騙して成長します。これが「偽りの自己」です。

「日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?」(Creative Media編、dZERO出版、2017年)に手紙を書いたのは、100人の子ども虐待サバイバーたちです。彼らは「偽りの自己」に気付いた人たちです。 虐待によって壊された「インナー・チャイルド」(内在する子ども、内在する自己、本来の自己)の存在に気づいています。自分が親から愛されていなかったことを受け入れ、自分が感じていた恐怖、痛み辛さ、惨めさ、悔しさに気付いたのです。気付いたからこそ親への手紙を書けたのです。

一方で、虐待されたことに気づかないサバイバーも大勢います。この人たちは、子どもの頃に自分が理不尽、嫌だ、痛い、辛い、と感じていたはずのことを、大人になってしまったら平気で子どもにしてしまいます。いわゆる「虐待の連鎖」というやつで「虐待をする側」にまわったのです。あまりに酷い虐待を受け続けたため、その分「偽りの自己」を肥大化させざるを得なかったのでしょう。虐待加害者はほぼ例外なくこのタイプだと思います。

ところで、私はスターウォーズシリーズが大好きです。スターウォーズで最も有名なキャラクターといえばダースベイダーです。初期3部作(エピソード4〜6)は、彼が暗黒卿からジェダイに回帰して物語は閉じます。つまり、彼はかつてジェダイでありました。彼は子どもの頃に奴隷として虐げられました。そして母に続いて妻を喪う恐怖から、フォースのダークサイドに堕ちました。彼は力によって他人に恐怖を与え支配する道を選ばざるを得ませんでした。痛みや恐怖によって「本来の自己」を壊され、「偽りの自己」と肉体だけが生き残りました。虐待加害者たちとよく似ています。彼のように加害者側にまわった子ども虐待のサバイバーたちを、スターウォーズに照らして、私は「ダークサバイバー」と呼ぶことにしました。

私も子ども虐待被害者です。実際、40歳くらいまでは、ダークサバイバーに陥っていた時期がかなりあったと思います。これからまた陥るとも限りません。気をつけたいところです。

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